運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

TA

タイムアタックではない。ティーチングアシスタントだ。

TAとは、学部生の講義や実習のアシスタントである。基本的に、その講義をする教員の受け持つ院生が駆り出される。
結構な給料が入ったりするので、やる側としてはお手軽なバイトみたいな感覚でできる。
筆者も修士課程に進学した時からTAを色々やってきた。修士進学と同時にバイトをやめたので、TA代が当時の主な収入源であった。

博士課程に進学した今年度も、何回かTAをやることになった。
ちなみに、学振初年度は、TAをあえてやらない方が税金を控除できる裏技を使えるので得らしい[1]。ただそんなこと言っても人手が足りていないので断れるわけはないのだが。




今日は、筆者にとって今年度初のTA業務があった。

学部3年生向けの植物分類学実習のアシスタントである。実習内容は、近くの公園などの池から採取したサンプルを顕微鏡で覗き、藻類をひたすら同定してスケッチするというものだ。
これだけ書くと小学生にも出来そうに見えるが、観察対象には結構区別が難しいものもいるので、それなりの知識は必要になる。かく言う筆者も、普段うずべんしか見ていないせいでうずべん以外の藻類の名前をかなり忘れていた。午前中にちゃんと予習し、午後のTA業務に臨んだ。

最初の数十分は、筆者の指導教官による藻類の多様性に関する軽い講義、そして実習の手順の説明がなされた。
今回の実習のクリア条件は、スケッチした藻類が合わせて「5綱以上」「10属以上」を満たすことになった。「綱」と「属」はどちらも分類学的なグループを示す単位で、「綱」はかなりでかいグループ、「属」は「種」の次に小さいグループである。例えば、ライオンなら「哺乳綱(いわゆる哺乳類)」、「ヒョウ属」に含まれる[2]。
逆に言えば、その辺の池にいる藻類には「哺乳類」クラスのでかいグループが5つ以上も混ざっていることになる。藻類の多様性は凄まじいのだ。




バックグラウンドがいかに凄まじくても、実習は地味である。

顕微鏡観察で正体の分からない藻類を見つけた学生が「これ何ですかー」と聞いてくるので、それに対応し、藻類の同定を手伝うのがTAの主な仕事となる。しかし、しばらくすると学生だけでも同定できるようになってくるので、後半こちらは暇になる。
加えて、今回は最近新しく導入した図鑑[3]が力を発揮した。この図鑑、とにかく見やすく、扱いやすく、情報も最新のものが過不足なく載っていて、知識の乏しい学部生の強い味方となったようだ。そのためか、TAの仕事量が明らかに少なく感じた。

とにかく暇になったので、筆者は自分のデスクからパソコンを持ってきて、来週に控えているプレゼンの準備をしたりしていた。
言っておくが職務怠慢ではない。学生の呼びかけには迅速に対応した。怠慢ではない。




午後6時、まだスケッチをしている学部生がちらほらいたが、その面倒は教員が見るということで、TAは解散した。定時退社だ。
実習前は藻類の名前を忘れていて少し焦ったが、本番は何事も無く終わり、図らずもプレゼンの準備が進み、有意義な時間であった。

この先TA業務が増えてくる。内容が楽であるとはいえ、毎回パソコンをいじれる訳ではないし、研究室にこもっての実験は全くできないので、その辺は少し慎重に計画を立てる必要がありそうだ。




参考
[1]「(学振)DC1 1年目の勤労学生控除について」勉強したこと覚え書き ( http://hayato311.blog.shinobi.jp/雑記・メモ/-学振-%20dc1%E3%80%801年目の勤労学生控除について )
[2]「ライオン」Wikipedia ( https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ライオン )
[3]中山剛、山口晴代 (2018) 「プランクトンハンドブック 淡水編」 文一総合出版