運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

鞭毛装置との戦い

先輩から託された鞭毛装置の観察を行った。
ここ1ヶ月以上TEMサンプルの不備などで全く進んでいなかったが、今回ようやく上手くいった。




まず鞭毛とは何かについて書いておこうと思う。
鞭毛は、細胞の遊泳に使われる糸状の器官で、これを鞭打つことで推進力を生み出したりする。
かなり幅広い生物が鞭毛を持っていて、ヒトでさえも精子の段階ではちゃんとした鞭毛が見られる。
また、原核生物(細菌など)にも鞭毛にあたるものが存在するが、構造が結構違うので、ここで扱うのは真核生物が持つ鞭毛に限定することにする。

鞭毛装置というのは、鞭毛の基部にあたる部分で、細胞内部の表層付近にある。
「装置」というだけあって結構複雑な作りをしており、鞭毛の基部の本体である「基底小体」と、それを支えるいくつかの根から成る。ベースはこれだが、生物種ごとに形が違ったりする(同じなこともある)。

ということで鞭毛装置は、ほぼ全ての真核生物が有していながら、構造にいい感じに共通性があったりバラついていたりするので、系統分類を行う時の指標としてとても都合がいい。




しかしながら、観察にものすごい手間と技術が必要になるという、ある意味致命的な欠点も存在する。観察にはTEMが必須だし、観察しなければいけないサンプルの量も多い。
筆者の研究室ではTEM観察の経験がある学生がたくさんいるが、鞭毛装置の観察をまともにできる学生は筆者だけである(自慢)。
とにかく大変なので、鞭毛装置構造のデータが揃っていない生物も多い。

今日の観察も、12時くらいから切片を切り始めて、16時くらいからTEM観察を始めて、めちゃくちゃ写真を撮っていたら21時半になっていた。とても疲れた。




今回観察した鞭毛装置は異例の中の異例みたいなやつなので、論文が出ればそれなりのインパクトがあるだろうと思う。早く紹介したいが、論文が出るまで我慢である。
まあこの研究は例の先輩のもので筆者は手伝いなだけなので、筆者は筆頭著者にはならないのだが。