運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

マカロニ

昨日の話だが、久しぶりにSEM(走査型電子顕微鏡)観察をやった。

観察対象は、未記載種と思しき謎のうずべんである。研究室の後輩が去年持ってきたサンプルから見つかり、筆者が単離したのでそのまま筆者が管理している。
見た目は地味だが、ざっくりと遺伝子を解析したところ、新種どころか新属まで作れそうな勢いのある、変わったうずべんである。遺伝子解析はまだ途中なので、結論を出すにはもう少し実験がいる。
また、詳しい形態観察はほとんど進めていなかったので、昨日とりあえずSEM観察をやってみたのだった。




SEM画像でもやはりパッと見は地味である。小型で、ただ丸いだけのうずべんだ。
鎧板を持っているタイプなので、記載するならその配列を決定する必要がある。鎧板の全体像を把握するため、細胞を舐め回すように写真を撮った。

その過程で、細胞表面に小さな突起のようなものがあることに気付いた。
長さは2μm程度の極めて小さい物体である。最初はゴミかと思ったが、どの細胞にもそれが着いているようなので、試しに目一杯拡大してみた。




それは「マカロニ」であった。




何を言っているのか分からないと思う。しかし、あれはどう見たって、正真正銘、パスタの一種のあの「マカロニ」だった。

細胞表面からマカロニ(のようなもの)が生えているうずべんなんて筆者は聞いたことがない。即座に先生に連絡したが、やはり思い当たるものは無いという。
一応、細胞表面に「鱗」を持つうずべんは存在する。Heterocapsa属のうずべんがそうである。しかし、その鱗は例えるならトライフォースのような形をしていて、マカロニとは似ても似つかない。

画像は現段階では未公開データであるため、ブログに貼れないのが悔やまれる。
というか、本当はこういうSEM見たらこんなのが見えました〜という話も書かない方がいい。が、細胞からマカロニが生えてました〜なんて書いた所で、そんな話を盗用されるリスクは限りなくゼロに近いだろう。

このマカロニの生えたうずべんを世に公開する方法は一つ、記載論文を書いて公開することだけである。
冒頭で話した遺伝子解析の結果も合わせれば、新属まではほぼ確実に立つだろう。非常に面白くなってきた。

筆者のメインの研究テーマからは外れるが、隙を見つけてデータを揃えていこうと思う。できるだけ早期の公開を目指すつもりだ。