運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

先輩のD論

今日、秋に卒業予定の博士課程3年生によるD論発表会が行われた。
この発表者には筆者の研究室の先輩も含まれている。そしてこの先輩は、前回の記事で紹介した、筆者が鞭毛装置の解析を手伝ったあの先輩である。

先輩のD論はイントロを含めた4章で構成されていて、そのうち筆者が関わった例のあいつの新種記載+鞭毛装置解析だけで1章分が成り立っている。
D論提出時点で鞭毛装置のデータは完全には揃っていなかったが、まあまだ投稿するわけでもないし、今あるものだけでもまとめてしまおうということになっていた。結果的に筆者の撮影した画像データが少し先輩のD論に載り、今日の発表でも登場することになった。
筆者としてはこのデータたちを我が子を見守る気分で見送っていたわけだ。まあ見送ったのは我が子どころか年上の先輩なのだが。

この1種の記載だけでD論全体の4分の1と考えると、結構なウエイトを占めているように見える。しかしそれも尤もで、こいつは分類学的にも細胞構造学的にも面白く、インパクトの大きいものである。この辺りは論文が公開されたらぜひ紹介したい。
とはいえ、D論発表の会場内に鞭毛装置に理解がある人が筆者と先輩と指導教官の先生しかいなかったので、反応は薄かったようだ。変な質問が飛んできたらどうしようかと聴講側なのに不安があったが、鞭毛装置に突っ込んでくる猛者はいなかった。




ちなみに、昨今の新型コロナの影響を加味し、D論発表会は部分的にオンラインで行われた。「部分的に」とはどういうことかと言うと、札幌にいる人は会場まで来て、札幌に不在のため来れない人は遠隔で参加という折衷案が採用されたのだ。
そもそも現在の札幌は新型コロナ関連では比較的落ち着いており、大学の警戒レベルも依然1をキープしている。そのため、今回のD論発表会のような重要な会合は開催を許可されている。当然、入口でアルコール消毒と体温チェック、部屋は広いものを使って換気を行うなど、感染対策は徹底していた。
しかし、現在札幌にいない人が参加したいとなった場合、長距離の人の移動が伴い、どうしてもリスクが増す。これで感染症を持ち込んだ場合、運営側である大学や研究室に責任が行くので、無理に来いとは言えないのである。
しかも今回は札幌に不在の発表者が2名もおり、参加諦めろとも言えなかったのだ。フィールドワーク系の研究者はとんでもなく足が軽いので、よくある話である。
ということで、札幌にいない発表者2名は遠隔での参加となった。

初めての半オンラインD論発表会ということで、機材の方で盛大にグダっていたが、形式としては良かったんじゃないかと思う。新型コロナとは関係なしに、こうした形式での発表会は理に適っている。
ポストコロナ社会などの洒落た(?)概念が生まれているが、そこではこういう発表会も普通になっていくのだろうか。