運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

イバラ

一昨日から今日にかけて日本植物学会がオンライン上で開催された。

植物学会初のオンラインでの開催ということで、参加者も運営側も数々の不安を抱えながら本番を迎えたが、蓋を開けてみれば大きなトラブルは全く起こること無く全日程を終えた。運営の皆様の入念な準備と臨機応変な対応のお陰であり、心から感謝申し上げたい。

特に、Spatial Chatを用いたやり取りは非常に斬新で面白かった。
Spatial Chatはオンラインコミュニケーションツールの一つである。画面上に参加者のアイコンが表示され、画面上での距離が近い人同士で会話ができる。逆に同じ画面上に映っていてもアイコン間に距離があると声は届かない。話したい相手を見つけたら、その人のアイコンに向かって自分のアイコンを近付けて声をかけるのだ。つまりやっていることは対面での会合と本質的に同じである。
今回の学会においてSpatial Chatは休憩室、懇親会、ポスター発表会場として用いられた。特に懇親会とSpatial Chatの相性が良く、正直オンライン上で成り立つのか最も不安だった懇親会が完璧に懇親会になっていて素晴らしかった。
さらに、懇親会中にSpatial Chatの使い方が参加者の中で開拓され、画面に画像や動画を貼る方法や、自分のアイコンをポインター代わりに動かして図の説明をする方法、ChooChooTRAINの真似や配偶子接合の真似などが編み出された。そして懇親会の翌日、つまり今日行われたポスター発表本番では、そこで身につけた技術が遺憾無く発揮され、対面での発表と比べて遜色ない完成度の発表会が行われた。
筆者のポスター発表もいい感じに終わった。

このように意思疎通の手段が充実していた(さらに筆者自身オンラインでの立ち回りの方が性に合っていた)こともあり、人脈拡大や情報収集は想像以上にうまくできた。
特に、自分の研究テーマと方向性の近い研究を行っている方と繋がれたのが非常に大きい。この方は今回若手奨励賞を受賞されていて、筆者は受賞講演を見て即ダイレクトメッセージを送り、結果色々とお話ができた。このような気になった人へのアクセスのしやすさもオンラインならではかもしれない。





ところで、うずべんの研究をやっているというのを人に話すと、かなりの高確率で以下のような反応が返ってくる。

「うずべんの解析は苦手」
「うずべんは難しいから避けていた」
「うずべんで学位取ろうとするのはやばい」

そう、これがうずべんの真実である。やつらは研究対象としては難易度が高い方なのだ。
研究者の間でうずべんがこのように見られているのは前から何となく分かっていたが、今回の皆さんの反応を見て確信した。うずべんの研究はイバラの道である。

うずべんがむずいとされる理由はいくつかあるが、大きなものとして培養が難しいものが多い点と、遺伝子の構成が極めて特殊であるという点が挙げられるだろう。
現に、この2つの要因は現在進行形で筆者を苦しめている。

この取っ付きづらさ故に、うずべんは研究対象としては面白いのだが、他の藻類と比べて研究が遅れている領域がある。まあ遅れていない領域もあるが。

しかし、筆者は「難しいほど燃える」タイプである。
これは研究に限らない。例えばゲーム。スマブラではパックンフラワーだし、ポケモンではグソクムシャだし、カニノケンカではグレートハンマーハナサキガニである。伝わる方がいるか分からないが、とにかくこういうのを使っていると「よくそんなの使えますね」と呆れ半分で言われる。その瞬間が筆者にとっての生き甲斐になっている。

こんな感じなので、「うずべんで学位取ろうとするのはやばい」と言われると、うずべんふざけんなと思いつつ、満更でもないのである。




学会を通してモチベーションがめちゃくちゃ上がったので、また明日から頑張ろうと思う。