高濃度バレンタイン
筆者の所属する研究室は、数年前まで留学生が多かった。今はほとんど日本人なのだが、筆者が所属したての頃はむしろ日本人の方が少なかった。
留学生たちはたまに母国のお菓子などをお土産として差し入れしてくれる。当然、それらは日本国内ではまずお目にかかれないものばかりである。表現を選ばずに言うと、どれも得体が知れない。食べてみて初めてどんな味か分かるものもよくある。
先日、フィリピンの研究室OBの先輩から差し入れが送られてきた。内容は干しマンゴーをチョコレートで浸したやつ、ちんすこうもどきみたいなお菓子、そして茶色いタブレット状の謎の物体である。
チョコマンゴーとちんすこうもどきは普通に美味しかった。ただしちんすこうもどきは全然ちんすこうでは無かった。
一方の茶色いタブレット状の物体。
筆者にはクッキーか何かに見えた。何も疑いもせず、そのままバキッと食べた。
その瞬間、極めて高濃度のカカオが筆者の口の中を襲った。
ひと噛みして「これヤバいやつだ」と気付いたが、吐き出す訳にもいかず、かと言ってパサパサしているのですぐに飲み込もうとしたら喉に詰まらせそうだった。結局鬼の形相で咀嚼して飲み込んだ。
この謎の物体、実はクッキーではなく、お湯に溶かしてホットチョコレートにするやつだったのである。しかも砂糖や牛乳は後から入れて味を調整する前提となっており、本体には甘味がほとんどついておらずめちゃくちゃ苦い。
筆者はそれを生で食べたのだった。
それの半分がまだ残っていたのでお湯に溶かして飲んだが、それでもまあ苦かった。
ところでチョコレートと言えばバレンタインであり、バレンタインは4日後に迫っている。
今回の体験が筆者にとってのバレンタインだとしたら、余りにも苦すぎる。