運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

非常に厄介

先輩から引き継いだとある生物のDNA解析を進めている。詳しくはこちら→ https://under-the-floor.hatenablog.com/entry/2021/01/28/223832




今回の対象の生物は培養することができず、天然のサンプルから単離してDNAを抽出する必要がある。そのため本来ならサンプリングに行く必要があるのだが、先輩が前に保存していたDNA抽出液が沢山出てきたので、まずはこれを使って遺伝子をPCRで増やせないか試みた。ぶっちゃけサンプリングに行くのは手間である。

やってみて分かったのだが、今回の対象は遺伝子を増やす段階から非常に難しい。
まず、やつは単細胞生物である。理論上、28S rDNA配列は単細胞でも解析が可能だが、それでも微小なDNAを扱うことには変わりなく、安定しない。
また、こいつは動物の消化管に済む寄生性の生物である。従って、こいつの単離の際に宿主の動物の細胞がコンタミしてしまうと、そちらの遺伝子を過って増やしてしまう可能性がある。
さらに、遺伝子配列が全く不明の生物を扱う都合上、PCRに使うプライマーがそもそも合っているかも分からず、DNAが上手く抽出されていたとしてもPCRが成功するとは限らない。

宿主の動物のDNAを増やす度に悲しい気持ちになった(3敗)が、15回ぐらいPCRした所でやっと目的の配列を得ることができた。
見方によってはたった15回で成功したのはラッキーとも言えるだろう。このまま無限にPCRし続けていたら心が折れる所だった。というか現に先輩は28SのPCRで心を折られていたのだ。




28S rDNA配列は3000塩基以上の長さがあるが、1回の解析で読める配列の長さはせいぜい1000弱程度である。よって、異なる領域の配列を何回かに分けて解析し、それを繋ぎ合わせる作業が次に待っている。

ここで更なる問題が生じた。どうやら、配列のとあるポイントに、ポリメラーゼ反応に異常が出る場所があるらしい。データを見ると、そのポイントで同じ塩基が10個ぐらい連続したあと、それ以降の塩基の信頼性が急に低くなってしまう。
この現象、トラブルシューティングの資料に載っていたので存在は知っていたが、実際になるのは初めてである。また、一般的な解析(サンガーシーケンス法)では対処が難しいらしい。

結果として、このポイント周辺の20塩基程が決定できずにいる。20/3000なら良いじゃんと思われるかもしれないし、実際良いのだが、ダサいのでちゃんと全部読みたいのである。




現状の進捗としてはこんな感じである。とにかくあらゆる面で厄介でぶん殴りたくなるが、進んで無くはないのでまだ希望はある。