運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

最近はひたすら机に座ってD論を進めるだけの生活である。ブログに書くような目立った内容が無いが、着々と進んではいる。




ここ数日はトランスクリプトーム解析の最後の詰めを行っていた。大体の結果はもう揃っているのだが、よく見ると解析し直した方が良さそうな遺伝子がいくつかあり、それをぷちぷちと潰している。

特に、今回調べたうずべんからrbcLとrbcSが見つかっていなかったのは問題だった。

これら2つの遺伝子は、RuBisCO(ルビスコ)という器官で働く炭素固定酵素をコードしている。光合成反応の主目的である炭素固定を司る遺伝子であり、あらゆる光合成生物が保持している。大と小の2つのサブユニットが組み合わさった構造になっており、遺伝子名のLとSはそれぞれLarge, Small subunitを示している。
うずべんも光合成生物なので当然これらの遺伝子は持っている。のだが、なぜか今回の筆者の解析では検出されなかった。

これはおかしいと思いデータを改めて調べたところ、rbcLは確かにトランスクリプトームに含まれていたものの、アノテーションに用いたKEGGのパイプラインで認識されていないことが判明した。
原因は分からないが、とりあえずrbcLが見つかりはしたので少し安心した。

しかし、rbcSの方はどうやっても見つからなかった。
2つあるサブユニットの片割れだけが発現していないというのはどう考えてもおかしいので、何が間違っていたのかと何時間もデータをいじくり回していた。

そのとき、筆者はうずべんのルビスコが「変」であることを思い出した。

実はルビスコには、真核生物が持つForm Iと、原核生物が持つForm IIの2つの形態がある。そして、うずべんのルビスコはなぜか原核生物型のForm IIであることが知られている。
もしやと思ってForm IIルビスコについて調べたところ、なんとこの形態のルビスコは大サブユニットのみで成り立っており小サブユニットを持たないと書かれていた。
つまり、小サブユニットをコードするrbcSはうずべんには存在しないのが正常なのだった。

KEGGアノテーションで認識されなかったのも、この形態の違いが原因だろうか?一応データベースにシアノバクテリアのゲノムも含めてはいたのだが…。

なんだか結構な時間を無駄にした気がするが、とにかく、ここ数日筆者の頭を悩ませていた問題が解決してすっきりした。
明日rbcLの系統解析を終わらせれば、必要なデータは完全に揃う。あとは図と文章にまとめるだけだ。