運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

うずべんの葉緑体遺伝子

真面目な話をする。




真核藻類や植物の葉緑体は、シアノバクテリア様の原核光合成性生物を細胞内に取り込んでできたものだと言われている。このシナリオは「細胞内共生説」と呼ばれ、高校生物の教科書にも載っている程度には広く認知されている。
要するに、真核藻類の細胞内に別の原核生物が入っている様なイメージで大体合っている。

そして、元々別の生物だった葉緑体には、別の生物だった頃に持っていたゲノムが未だに存在する。これが「葉緑体ゲノム」である。
葉緑体ゲノムには今でも葉緑体遺伝子が残っていて、ちゃんと発現して機能している。とはいえ、葉緑体は宿主の真核生物と完全に一体化しているので、それ単体で生命活動を維持することはできないし、増えたりもしない。





うずべんも藻類の一員であり、その葉緑体には当然葉緑体ゲノムが存在する。

しかし、うずべんのそれは非常に奇妙な特徴を持っている。何事もただでは済まないのがうずべんだ。

まず普通の葉緑体ゲノムについてだが、ゲノムというからにはやはり二本鎖DNAで構成されている。さらにそれが環状になっているという特徴がある。大きなひとつの輪っかに、たくさんの遺伝子が並んでいる感じだ。
一方、うずべんの葉緑体ゲノムは、小さなたくさんの輪っかから成っている。この輪っかは「ミニサークル」と呼ばれていて、それぞれのミニサークルには基本的に1個の遺伝子が乗っている。たまに遺伝子が複数並んでいたり、何も遺伝子が乗っていないものもあるらしい。

なんでうずべんの葉緑体ゲノムだけ細かく小分けにされているのか、めちゃくちゃ謎だがよくわかっていない。




筆者は最近、この辺の話に興味を持ちつつある。
というのも、筆者の研究対象のうずべんは葉緑体が縮退しつつあり、機能面もちょっと維持できてないっぽい雰囲気がある。このことから、遺伝子の方はちゃんと維持されてんだろうかという疑問が出てきたからだ。

そこで、研究対象のうずべんの葉緑体遺伝子を解析してみようと意気込んでいるのだが、これが全く上手くいかない。




上手くいかないという話は次回やろうと思う。