運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

オンライン学会の可能性

新型コロナウイルスの影響で多くの学会が中止に追い込まれる中、部屋から出ずにオンライン上で学会をやろうという企画が昨日行われた。アカデミスト株式会社様主催の「アカデミスト学会」である。
詳細はこちら http://conf.academist-cf.com




オンライン会議用ツールであるZoomを使い、演者は自分の顔とプレゼン画面を共有しながら発表、聴講者はそれをパソコン越しに眺める。また、オンライン上で質問や投票を受け付けることのできるslidoというツールを使って、聴講者は演者に対し質問を投げたり、よかった発表に投票ができたりする。
パソコンでZoomを、スマホでslidoを同時に見ることが推奨されていて、これで十分「学会」として成立していたように思う。

分野は理系から文系まで様々だった。ここまで多様な分野の研究者が一堂に会することは、オフラインでは逆に有り得ないのではとも思う。初の完全オンラインの学会ということで注目度も高かったということだろう。
また、演者の中には筆者の知り合いが含まれていた。Dr.クラゲさんこと泉貴人さんである。筆者が普段仲良くさせてもらっている動物の分類の研究室に縁のある人で、紆余曲折あって一昨年ポケモンで対戦したことがある。

ちなみに筆者も発表を検討したのだが、元々3月後半に予定されていた学会に合わせてギリギリまでデータを取るつもりで実験計画を立てていたので、色々間に合わず断念した。

当日、筆者は第1部の宇宙物理学関連と第2部の生命科学関連の発表のみ聴講した。
今回は演者も多様なら聴講者も多様ということで、各分野の専門家のみが集まる普通の学会とは異なり、聴講者の大半がその分野の初心者だった。筆者なんて物理は中学校で止まっている。しかし、演者の皆さんもその辺への配慮は万全で、どの発表も非常に分かりやすく、面白かった。




ここでは、オンライン学会という企画そのものに対する感想を書いていこうと思う。

まず、部屋から出なくていいと言うのは本当に素晴らしい。手軽だし、余計な緊張感が無くて楽である。筆者は布団にくるまりながら発表を聞いていた。
日本国内に戻るだけでも大変な海外の研究者も、オンライン上なら簡単に参加できたりする。これは大きな利点だと思う。

また、質問が出しやすい。人が大勢いる空間で挙手するのと、布団の中でスマホで入力して送信するのとでは、後者の方が圧倒的に気楽である。
さらに、投げられた質問は参加者全員で共有出来る上、質問に対し👍ボタンを押せるというのが面白いと思った。質問と言っても中には割とどうでもいい内容のものから、「確かに〜」と思ってしまう鋭いものまで色々ある。その「確かに〜」となる質問に対して👍を押せるのである。この数が聴講者の興味の度合いを示すことになり、喋る側にも聞く側にも有益な情報になる。あと、自分が投げた質問に👍が付くと、嬉しいというか、「ですよね〜!」という気分になる。こういう意志のやりとりはオフライン学会の空気では成しえないだろう。

一方、質問のピックアップの仕方は少し気になった。
今回、演者とは別に司会の方がいて、学会の進行役を担っていた。投げられた質問のうち、演者の方に答えてもらうものを選ぶのも司会の方だった。通常の学会で言う座長に当たるだろう。
ここで通常の学会と違うのが、質問の流れが「挙手→質問者の選定→質問」ではなく「質問→質問内容の選定」となっていることである。つまり、司会の方が質問の内容をまず見て、その中から良さげなやつを選ぶということになる。
この時点で、司会の方の好みによるバイアスがちょっとかかるんじゃないかと思った。司会の方の専門分野に近い内容の質問ばかりピックアップされるようだとあまりよくない。
今回はそうした印象は持たなかったが、今後また別のオンライン学会が開かれた場合は、司会役の上手さが問われるかもしれない。

他に気になった点と言えば、やはり配信環境の不備による事故だろうか。今回、実際に声がうまく入力できずスタートが遅れた方がいた。これについては本当に事故だと思うので仕方ないが、オフラインと違って融通が利きづらいので難しい問題である。




色々書いたが、オンライン学会という企画は本当に素晴らしいと思う。新型コロナの何やかんやを抜きにしても利点が多いので、この先改善を重ねつつどんどん普及してほしい。




あと泉さんにアカリク賞が贈られたようだ。おめでとうございます。