運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

思ったよりよく分からない

先週末パソコンの調子が悪くなって作業が止まったが、昨日あたりに復帰した。
パソコン復活後は、当初やる予定だったKEGG Automatic Annotation Server (KAAS)による葉緑体ターゲティング遺伝子の機能的アノテーションを実行した。分かりやすく言うと、この遺伝子はこういう機能を持ってますよ〜というのを決定する操作である。
これにより、筆者のうずべんにおける葉緑体の機能の一覧が完成した。

確かに求めていたものは完成した。

しかし、その内容が思っていたのとだいぶ違った。
未発表データなので具体的な事は書けないが、端的に言うと「あまりにも足りていない」のである。




そもそも、葉緑体というのは光合成をする為だけの細胞小器官ではない。ヘムやIPPなどの生合成系がクロロフィル合成系から派生していたり、その他にも脂肪酸アミノ酸などの合成を行っている。
これらの生合成系は光を必要としないものも多く、葉緑体光合成能力を失った後でもある程度保持される例が多数知られている。

今回の筆者の解析では、普通に光合成を行う種と、あまり光合成をしていない種が対象となっていた。両者とも少なからず光合成能力を有している。
そのため、解析前の予想では、葉緑体内の生合成経路はほとんど残っていて、あまり光合成をしていない種で多少の欠落が見られる程度かなと思っていた。

ところが、蓋を開けてみると全ての種について様々な生合成に関わる遺伝子がごっそり抜けているように見えるのである。




考えられるストーリーはふたつある。

ひとつは解析のミス。まずはこれを疑うべきだろう。
葉緑体関連遺伝子を抽出する際、その基準を厳しくしすぎたか何かで漏れが生じた可能性がある。解析時の設定などを見直すべきかもしれない。

もうひとつは、本当にその生合成系が消えているという説。
実はこの説も理にかなっていない訳では無い…のだが、今結論づけるには早すぎる。

検証のために、試しに他の光合成性のうずべんで解析をしてみようと思っている。勿論RNAの抽出からやっていたら時間が足りないので、公開済みのデータを拝借するつもりである。

中々すんなりとは行ってくれないが、面白くなってきたとも思う。