運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

起業

23日に控えている講演会の準備を進めている。
前々回の記事で書いた通り、話す内容は自分の研究のこと、博士課程へ進んだきっかけや今後のことなどがメインになる。

…のだが、講演の主催者からもう1つお題を頂いている。
「もし起業するとしたら自分の研究で活かせそうなポイントは何か」というものだ。




筆者は研究をやるために博士課程に進んだ。というか博士課程に進んだ人たちの大部分は研究をやるために来たのだと思う。
博士修了後はどこかでポスドクか、まあ万が一上手くいかなかったら諦めて普通に就職なのだろうと考えていた。
「起業」という選択肢は筆者には全く無かった。

講演の依頼を承諾した後にこのお題を頂いたので、予期せぬ事態に最初面食らってしまった。
とはいえ、筆者が起業をするルートなんて普段想像することがない。将来の選択肢を広げるという意味ではいい機会だと思い、起業について話すことにも承諾したのだった。




藻類関係のベンチャー企業で成功しているものと言えば、真っ先に名前が上がるのが「株式会社ユーグレナ」だと思う。
公式→https://www.euglena.jp/

ユーグレナとはミドリムシのことで、ミドリムシが作る物質を利用した製品の開発、またミドリムシの大量培養を応用したバイオ燃料の開発などが主な事業らしい。
ミドリムシは実際に「パラミロン」という特有の栄養貯蔵物質を生成し、顕微鏡下では透明で細長い長方形の物体が細胞内にたくさん見える。これが健康食品などに利用されているのは確かに最近見るようになった。

ところでうずべんも「ペリディニン」っていう特有の色素物質作るんですけど商業利用できませんかね…?無理か。




公式HP内の出雲充社長のメッセージを読む限り、解決したい大きな問題、ここでは食料問題があって、それを解決するためのものを探した結果ミドリムシに行き着いた、という発想の流れらしい。
うずべん面白いけど何かに使えないかな〜みたいな甘えた考え方とは違う。目的と手段が逆だ。

結局、最初に来るのは「目的」だ。その解決のために「ミドリムシ」と「起業」に行き着いたのが出雲氏だ。
では筆者の今の目的は何かと言うと、「うずべんの葉緑体消失進化の謎を解明したい」である。質が違いすぎる。
この目的を突き詰めるためだったら起業をする必要性が全くないし、研究を続けるのが正しい道なのは明らかだ。




「筆者は起業しない方がいい」という結論に至ってしまった。詰んだ。
講演どう誤魔化そうか…。