運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

徹夜

昨晩、久しぶりに徹夜をした。

実験が長引いたとか作業に追われていたとかではなく、共通の趣味を持つオタクの皆さんで集まって酒を飲んでいたらいつの間にか朝の7時になっていたというだけである。
やはりオタクは話を始めると長い。

解散してから昼過ぎまで寝ていたので、生活リズムが大幅に崩れてしまった。
健全な研究は健全な心身から成り立つ。週明けまでにできる限り生活リズムを元に戻す必要がある。




筆者は元々徹夜というものが苦手で、さらに最近は若さを失いつつあり、こういう無理をすることは全く無くなっていた。

最後に徹夜らしい徹夜をしたのは、2年前にある実験をしようとした時だと思う。
筆者が扱っているうずべんは、夜の間は床にへばりついて寝ている。そして寝ている間に細胞分裂を行っているらしい。
その細胞分裂の瞬間を固定してTEMで観察しようという実験をやろうとしたのだ。

まず細胞分裂してそうな細胞を見つけ、タイミングを見計らって薬品をぶち込んで固定する。この実験操作スタートの時点で真夜中になる。
これをTEMで観察できるようにするためになんやかんやする。具体的にはアセトン漬けにしたり、樹脂を浸透させたりする。これが結構時間がかかり、終わる頃には朝になっている。

この後しっかり寝て、用意したサンプルは後日観察した。
ところがいざTEMで観察してみると、細胞はぐちゃぐちゃになっていてまともに観察できない状態であった。
細胞分裂中の細胞は分厚い壁(ペリクル)に覆われていて、どうやらこれのせいで樹脂が極めて浸透しづらくなっていたらしいのだ。

徹夜で用意したサンプルがこうもぐちゃぐちゃだとさすがに萎える。

この邪魔なペリクルを何とかする方法も調べてはみたのだが、やっぱこいつ樹脂通さないよね!みたいな文献が出てきただけで何の解決にも至らなかった。

ということで、「分裂中の細胞をTEMで見たい」という筆者の野望は儚く散ったのだった。




これ以降徹夜で実験はしていない。する必要がないからだ。
解決策が見つかったらまたやるかもしれないが、正直あんまやりたくはない。