工作
3月にあった学会で、海水から謎のうずべんをたくさん集められる方法について情報を得ていた。
20μmのフィルターにかけて濾過して出てきた海水を回収し、さらに5μmのフィルターで濾過して残った海水を回収し、5〜20μmの細胞だけを集める方法だ。邪魔な珪藻、多細胞生物、小さすぎる藍藻などを除くことができるらしい。
今週末にサンプリングに行くので、せっかくなのでこの方法を試してみることにした。
フィルターを2回かける必要があるので、普通のプランクトンネットでは都合が悪い。そこで、この方法のための装置を自作することにした。
フィルターは研究費で購入した。1㎡で25000円とかした。高い。
問題はこのフィルターを固定する装置の方である。
色々思案した結果、プラスチック製の水筒をいくつか組み合わせて作ることにした。
これが材料の水筒である。ダイソーで3本購入した。1本108円。安い。
これをノコギリで分解する。
こんな感じである。
これの間にフィルターを挟んで、縦に3つ重ねると…
…こうなる。写真だとよく分からないが、上から水を入れると、まず20μmのフィルターで濾過されて下へ進み、さらに5μmのフィルターで濾過された水が1番下から出てくる。5μmのフィルターの上には5〜20μmの物体が残っているはずなので、これを回収するという寸法だ。
名前は「アルティメットウズベンソーター」にしよう。
使用感を確認するため、筆者はアルティメットウズベンソーターとバケツとポリ瓶を持って大学構内の池へ向かった。
池の水をバケツからアルティメットウズベンソーターに注ぐと、みるみるうちに水が濾過されていく…と思いきや、濾過のスピードがあまり速くない。
どうやら5μmの穴が思った以上に物を通しづらいらしく、すぐに詰まってしまうようなのだ。
穴が詰まるのはもうどうしようもないので、何らかの圧力をかけて水を無理やり通させるしかない。
そこで筆者はまたダイソーへ行って材料の水筒を補給し、研究室へ戻り、アルティメットウズベンソーターに改造を施した。
結果完成したのがこちらである。
やはり写真では分からないが…20μmのフィルターの上に注ぐことのできる水の量を大幅に増やした。水の重さにより圧力をかけて、濾過速度を上げようと考えたのだ。
名前は「アルティメットウズベンソーター改」だ。
再度池へ向かい、濾過速度を確認してみた。
ぶっちゃけ遅いが、まあ気持ち速くなったような気がする。
さらに回収した水を顕微鏡で覗いてみると、密度はそこまで高くはないものの、確かに小型の原生生物だけが選択的に集められているようだ。
現時点でこれ以上の改善が望めそうにないので、サンプリングにはこれを持っていくことにしようと思う。
今日は工作をしていたら日が暮れていた。ちなみに試行錯誤の結果、ダイソーの水筒は6本消費された。札幌のダイソーは突如として深刻な水筒不足に陥ってしまった。
週末のサンプリングでは、筆者の研究対象である混合栄養性のうずべん、特にParagymnodinium属かその辺に近いのを狙う。アルティメットウズベンソーター改からいいサンプルが取れれば嬉しいが、どうだろうか。
(情報を提供していただいた東大アジアセンターの高橋和也さん、ありがとうございました。)