運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

この世界の覇者

珪藻類は不等毛植物に含まれる単細胞藻類の一群で、茶色い葉緑体を持ち、ガラス質の被殻に覆われていることを特徴とする。
現在最も繁栄している光合成生物のひとつで、地球上の酸素発生量の25%が珪藻によるものらしい。現代は珪藻の時代と言っても過言ではない。

そんな珪藻だが、筆者はぶっちゃけそんなに興味が無い。普段はうずべんを押しのけてめちゃくちゃ増える邪魔な藻類みたいな認識である。
珪藻はほっとくと本当にものすごい勢いで増える。野外から拾ってきたサンプルに珪藻がいるとひたすら邪魔なので、早いうちにゲルマニウムをぶち込んで殲滅する()。
うずべんたちにもこの満ち溢れるやる気を見習ってもらいたいものだ。




さて、今日は学部生向け実習のTAの担当日で、内容は珪藻についてだった。
筆者は普段珪藻に対してヘイトを溜めるばかりなので、知識が本当に薄い。しかし、学生たちは皆図鑑を見ながら自力で同定していて、この点において筆者の出る幕はなかった。偉い。

筆者の主な仕事は、種同定ではなくむしろSEMの操作の指導だった。
珪藻は物によってはかなり小さく、さらに被殻の模様が重要な分類形質になったりするので、最低でも高倍率の光学顕微鏡、できればSEMを使った観察が求められる。
ということで実習内容にもSEMによる観察が盛り込まれており、普段SEMをよく使う筆者はその指導係となったのだ。

ちなみに、鎧版のないうずべんだと超難易度と化すSEM観察だが、珪藻はびっくりするほど簡単だ。
サンプルの準備も、まず珪藻を遠心して集めて、パイプユニッシュ被殻以外の物質を洗い流して、乾かすだけである。薬品固定なんてものは要らない。
毎回固定法について四苦八苦している筆者を嘲笑うかのようなインスタントさだ。ずるいぞ珪藻。

そして、SEMで見える珪藻の被殻の画像は、一般的な感覚で言うと結構綺麗なものである。輪郭はスマートで、細かい点刻が線対称に美しく並んでいる。
学生の反応も良く、像が画面に映し出されるとおおーっという声が上がることもある。やっぱずるいぞ珪藻。




やはり、この世界を牛耳る藻類なだけはある。強い。

人間である筆者が敵対心を燃やすのは自分でもよく分からないが。