オタクの人生
だいたいの人間には「大切なもの」がある。
中身は人によるが、財産だったり恋人だったり家族だったりする。場合によっては夢とかプライドとか概念っぽいものになることもあるかもしれない。
その大切なものが、普通に生きていればたどり着かない領域にあったりする場合がある。普通の人から見ればどうでもよかったり、理解できなかったり、むしろ気持ち悪かったりする。そうなったきっかけは知らない。そして普通の人は、そういうものを追う人を「オタク」と呼ぶ。
オタクにとって他者からどう思われているかというのは、まあそんなに重要じゃない。
オタクにとっての「大切なもの」は、財産や恋人や家族と同じか、それ以上の価値を持っていて、「人生」とかそういうのと似た重さを感じさせるものになっている。その内容が他者から見ると変なだけ。それだけだ。
そしてその大切なものはオタクの人格や価値観を形成していき、その魂に深く根付き、まさに人生そのものになる。
筆者だってそうだ。筆者の人生観に大きな影響を与えたゲームがあり、バイブルと化した小説がある。
人は大切なものを壊されるとキレる。当たり前である。大切なのだから。
もちろんオタクも大切なものを壊されるとキレる。しかし、その大切なものがオタクでない人から見るとどうでもいいものだったり、気持ち悪いものだったりする。でもオタクにとってはそれは「大切」で、人生と似た重さを持っていて、人格や価値観の礎となったものだったりするのである。これを壊されたらキレる。当たり前である。
今日の京都アニメーションの事件はあまりにも強烈すぎた。
まず、事件の対象がどうとかそういうのを抜きにしても、今回の事件は歴史に名を残す凶悪さであった。現時点で25人亡くなっているらしい。
人的被害はもちろん、多くの貴重な資料やデータも無に帰したことだろう。
そして、それがよりにもよって京アニだった。ここは多くのオタクたちの人生を創った場である。これがやられた。
さらに、これが「事故」ではなく「事件」だったという、誰かの手によって壊されたという事実。
筆者はオタクだがアニオタではない。恥ずかしながら、どのアニメが京アニのものなのかほとんど分からない程度にはアニメに疎い。
だから少し外側から冷静に眺める形になっているので、この事件で衝撃を受けた人達の様子がよく見える。
オタクたちは今呆然としている。何が起きたかよく分かっていない。なぜこんなことになったのかもよく分かっていない。
というか犯人が何者で、その意図が何なのか分からない。キレたオタクによる犯行なのか、オタクに恨みのあるオタクでない人間による犯行なのか、分からない。モヤモヤする。
とにかく、今日の事件は歴史的な犠牲の出た大事件であると同時に、文化的価値のある資料の喪失であり、そして星の数ほどのオタクの人生を破壊した大規模テロであるということになる。
犠牲者の方々のご冥福をお祈り致します。