運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

共同戦線

筆者の得意とする技術というと、たぶん透過形電子顕微鏡(TEM)観察である。

TEMは細胞内部の微細構造を詳しく観察するのに使われる。
大きめの動物や植物なら、体内の構造を観察するには通常の光学顕微鏡で十分である。しかし、うずべんのような単細胞生物ともなると、電子顕微鏡レベルの解像度が必須となる。
うずべんのような生物にも細胞内には色々と変なものが入っている。この形質は分類をするときにも使われたりするので、分類をやるならTEM観察は習得しないといけない。

筆者の場合、色々あってTEMをやりすぎた結果、これが最も得意な技術になってしまった。
特に、鞭毛装置構造の再構築をまともにできるのが、たぶん研究室内だと筆者だけである。
鞭毛装置は分類をする上でよく参照される構造なのだが、この立体構造を完全に把握するためには、結構な量のサンプルをミスなく用意しなければならないので、やれる人が限られてくるらしい。

鞭毛装置を1つ観察しきっただけで修論が(ほぼ)でき上がった例が存在するレベルである。

具体的にどんな操作を行うのかはまた書くかもしれない。とにかく面倒くさいということだ。




この筆者のスキルを見越して、最近研究室の先輩からある依頼を受けている。
その先輩の研究対象(詳しくは伏せるがうずべんではない)の鞭毛装置を観察して欲しいという依頼である。

普段その先輩は鞭毛装置なんて見ないのだが、今回これを観察する必要性が出てきて、手っ取り早く終わらせるために筆者に任せようということにしたらしい。

筆者がこのデータの取得、解析を行った場合、その研究成果の論文には「共著者」として筆者の名前が載ることになる。「筆頭著者」ではないのでおまけみたいなものだが、こちらとしては重要な業績のひとつになる。
ということで、先輩は大変な作業を後輩に押し付けられて、筆者は上手く行けば業績が増えるのでwin winというわけである。




ということで、ここ最近は先輩の研究対象をTEM観察している。

しかし、その細胞がやたらでかい上に鞭毛が全く目立たず、どこに鞭毛装置があるのかわからない。未だに鞭毛装置を発見することすらできていない。今日も虚無を観察して終わってしまった。
もうちょっと簡単に行くと思っていたが、案外苦戦している。

明日またやるが、見つかった時のことを考えると楽しみではありつつも、とっとと終わらせて自分の研究に戻りたいとも思う。