運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

やる気

うずべんは単細胞生物であり、めちゃくちゃ小さい。直径はだいたい数十μmである。
めちゃくちゃ小さいので、観察にしろ実験にしろ、うずべんを扱うには増えてもらった方が都合がいい。詳しくはこちら https://under-the-floor.hatenablog.com/entry/2019/04/19/202843

しかし、当然全てのうずべんがホイホイ増えてくれる訳もなく、どんなに丁重にもてなしてもすぐ死んでいったりする。というかそっちのパターンの方が多い。

こないだなんて、単離したうずべんが10細胞くらいまで増えてから急にやる気を失って全滅した。上げて落とすのはやめて欲しい。




そして筆者が現在進行形で観察しようとしているうすべんも、中々増えてくれずに困っている。
去年初夏頃に単離し、しばらくは普通に増えていた。しかし冬頃からやる気を失い始め、じわじわ数を減らし、現在少数が辛うじて生き残っている。

分子系統解析だけはだいぶ前に終わっていて、新属新種であることを示唆する結果が出ている。
また、詳しくは書けないがとある特徴を有しており、とにかくこのうずべんからは良い論文が2、3本は書けそうなのだ。

ということで全滅だけはして欲しくないのだが、今はギリギリの低空飛行を続けている。胃に穴が開きそうである。

ちなみにこのうずべん、1日の大半を止まって寝て過ごしており、泳いでいるのは午後2時から4時頃だけである。どんだけ怠惰だ。




連休が終わった世間は鬱に飲まれている。一方の筆者は、パソコンも新しくなり、研究費の交付申請も完了し、むしろやる気に満ちている。
例のうずべんについては、まだ少しでも生き残っているうちに詳しい観察をやってしまおうと判断した。筆者とうずべんのやる気が噛み合っていないが、頑張ってもらおうと思う。

今回は走査型電子顕微鏡(SEM)を使った観察を試みた。

SEM観察は結構手間がかかり、準備を始めてから観察が終わるまでだいたい2日かかる。今回の場合は昨日から準備を始めていた。
さらに種によっては観察難易度が高く、こだわり始めると沼である。
この辺りの事情についてもいつか書きたいが、今回は割愛する。




結果、観察ができた細胞はたった1つだけで、状態もあまり良いとは言えなかった。
それでも、近縁属に共通して見られるある構造(のようなもの)が撮影できた。初回の、しかも死にかけで数が少ないうずべんを観察したにしては、まあ上出来と言えよう。

当然データは全く足りないので、追加の観察が必要である。




明日もう一度SEM観察用サンプルの準備をしてみようと思う。あとは透過形電子顕微鏡(TEM)の方も用意しなければいけない。
うずべんにはこれからもバリバリ働いてもらおう。死なない程度にな。ふふふふふ。