運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

一生分の虫

久々の投稿となる。

更新が止まっていた間、研究林実習のTAをやっていた。この実習は、様々な方法で昆虫を採集し、それを全てソーティングするという極めてゴリ押しな内容となっている。
筆者の研究対象は微細藻類なのだが、昔趣味で昆虫採集をやっていたということで駆り出された次第である。実は筆者はこの実習のTAを毎年やっていて、TAとしてはすでに3回目、学生として参加した時を含めると4回目の参加となる。




具体的な内容は以下の通りである。

まず月曜朝に研究林へ到着。ここから水曜昼に戻ってくるまで、トラップを仕掛けたり直接虫を捕まえたりする。
天候は実習を通して晴れであり、フィールドワークを行うには暑くて大変であった。
ちなみに夜は毎晩飲み、毎朝6時起床という結構きつい日程である。

水曜昼に大学へ戻ると、捕まえた動物を余すことなくソーティングする。
ソーティングするのは「昆虫」ではなく「全ての動物」である。従ってクモやダンゴムシはもちろん、細かいダニや、間違えて捕まえてしまったカエルなども全て対象となる。
ちなみにソーティングの基準は「目」レベルである。目とは分類階級のひとつで、例えば昆虫ならチョウ目とかハチ目とかバッタ目とか、それくらいのスケールの分け方になる。

最初は「目レベルで分けるだけなら余裕」とか「見た感じそんなに数いないし余裕」とか思っている学生が多いが、すぐに細かいダニ、トビムシ、ハエに分からせられることになる。
微細な虫の数というのは想像を遥かに上回り、結果的に何千という虫をカウントさせられる。パッと見ではあんまりいないように見せかけて実はめちゃくちゃいるので、精神的に苦痛が大きい。ちなみに今年はハエの数が例年より凄まじく多かった。

ソーティングは木曜のうちに終わらせなければならないが、普通に終わるビジョンが見えないのでTAもソーティングに参戦する。毎年こうなる。
筆者は毎年様々な虫をソーティングしてきた歴戦の猛者である。この実習で学生たちは一生分の虫を見ることになる訳だが、その点筆者は人生を3週くらいしてきたと言っても過言ではない。
現に筆者のソーティングスピードはかなりのものであり、ソーティング結果を学生に届けに行った時の「えっ速っ」みたいな反応は中々の快感がある。

なんやかんやあって全てのソーティングが終わったのが木曜の夜8時過ぎであった。

そして今日だが、ソーティング結果をトラップや採集方法ごとにまとめて、それぞれプレゼンしてもらった。
なんと朝にプレゼンを作り始めて夕方には発表会を始めてしまう日程である。院生ならわりとやってそうだが、学部生にやらせる日程としては相当な短期決戦と言える。
取れた虫について目立つ傾向などがあれば、それがどう説明できるかも発表してもらう。半日で思いつく考察などたかが知れているが、それでも結構面白い説明をしてくる学生がいるので案外楽しい。




という感じで今に至る。

TA側にも結構な負担のかかる実習であり、記事を書いている余裕が無かったが、今日やっと終わったのでまとめてみた。

こんな実習やって何の為になるんだと思われるかもしれないが、実の所この実習を経験したことで、今の研究生活でのハードな実験に対する耐性が付いているような気がするので、ある意味では結構得るもののある実習なのではないかと思っている。