運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

うずべんの朝は早い

うずべんにも生活リズムがある。ないやつもいるが。

例えば筆者が扱っているParagymnodinium stigmaticumといううずべんは、夜の間は不動細胞(シスト)を形成して眠っており、朝8時過ぎから目を覚まして動き始める。
この朝8時というのは培養庫の明かりが付く時間である。夜は24時に消灯するように設定されている。
従って、このうずべんが朝8時という時間を体内時計で認識して起床するのか、明るさの上昇を認識して起床するのか、そのへんは微妙だ。
ちなみに、このうずべんは餌(クリプト藻)を食べて生活しているのだが、お腹がいっぱいになると暗くならないうちに寝る。いい生活である。




ところで、このうずべんは寝ている時に床や壁にへばりつく習性がある。
このへばりつき方がかなり強力で、多少の物理的ダメージはもちろん、化学薬品による固定を食らっても剥がれない。文字通り死んでも離れない状態と言える。

この「寝ている間は壁から剥がれない」というのはちょっと有用だ。
例えば、8時より前のうずべんが寝ている状態の培養液をピペットでわしゃわしゃするだけで、餌のクリプト藻を洗い流して除去することができる。以降「寝込み洗浄法」と呼ぶことにする。
この方法だともちろん多少のクリプト藻は残ってしまうが、ほぼ無視できる程度の濃度まで落とすことが可能だ。
このうずべんは餌無しでは(今のところ)培養不可能なので、「うずべんだけが入った培養液が欲しい!」となると、うずべんを1匹ずつ単離して集めるか、寝込み洗浄で妥協するかしかない。

寝込み洗浄法のデメリットには、餌の除去が完璧でない点の他に、朝早く研究室に行かなければいけない点もある。朝8時前が「朝早い」と言えるかは気にしないで頂きたい。少なくとも筆者にとっては早い。
8時を過ぎるとうずべんがじわじわ動き始めるので、寝込み洗浄をしようとすると起きて泳いでいたうずべんは洗い流されてしまう。早起きしたのに流されるとか気の毒でしかない。
筆者としては、これによるうずべんの無駄な殺生はできるだけ避けたいので、なるべく8時より前に操作を開始する必要がある。




ということで、今朝はうずべんを寝込み洗浄してきた。
筆者は朝がとにかく苦手なのだが、無理やりにでも早起きするとやはり活動時間が長くなる分進捗が生まれて良い。今日は日曜だが平日より仕事したと思う。

そして、明日も朝から寝込み洗浄だ。今やろうとしている実験のために、この操作がどうしても必要なのだ。
要早寝早起きである。うずべんに合わせた生活リズムも悪くない。