運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

倫理

とあるポケモンのデザインについて物議が醸されている。

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奇妙奇天烈な見た目をしたこいつがその「カセキメラシリーズ」の一体「ウオノラゴン」というポケモンである。このシリーズには他にあと3種類いる。

ポケモンには化石の復元という概念があり、例えば初代ポケモンではプテラオムスターカブトプスが化石から復元され現代に生を受けたポケモンたちである。
で、先に挙げたカセキメラたちは、あろう事か異なるふたつの化石(しかも体の一部)をめちゃくちゃに合体させた上で復元されてしまったポケモンであるらしい。ウオノラゴンは爬虫類っぽい尻尾の先端に魚っぽい頭が付いている。

このカセキメラたちが生命の冒涜であるということでめちゃくちゃ叩かれている。

まさかポケモン生命倫理の問題が盛り上がるとは思っていなかったが、批判側の主張は至極尤もである。
あと、単純に趣味が悪いという批判も聞く。確かにしっぽの断面が普通に見えてる所とか、CERO Aにしてはギリギリだったんじゃなかろうか。




ただ、このポケモンのデザインについて元ネタを知っている人間からすると、非常に面白いというか感動すら覚えるレベルであるのは言える。

元ネタというのはつまり、化石の一部が本来と違った形で組み合わされて復元されるケースである。筆者は古生物学はほとんどわからないが、こういう事例がわりとあることは知っている。
例えばあの有名なアノマロカリスも、体の一部が化石として見つかった際、それが単体の生物だと考えられた。最初からあのアノマロカリスの形に組み合わされて復元された訳ではない。
また、やたら刺々しい形で知られるハルキゲニアも、最初は足と棘が逆向きに復元されていたという話を聞いたことがある。ついでに前後も逆だったらしく、つい最近の2015年に頭と尾が逆向きの復元図が新たに提唱されたらしい。(https://www.afpbb.com/articles/-/3052710)

ということで、ポケモンのカセキメラたちを最初見た時、筆者はめちゃくちゃ笑ってしまった。

また趣味が悪いという批判についてだが、元々筆者は趣味の悪い人間であるということもあり、じつはこのデザインはかなりツボである。今でもカセキメラたちの写真を見るだけでちょっと笑ってしまう。




おそらく、問題の本質は今書いたことではなく、めちゃくちゃに組み合わせたポケモンを現世に生きた形で蘇らせたことだろう。

こういう「本来異なる生物を組み合わせるないし掛け合わせて見世物にする」行為は現実だと確かにアウトである。
例えばライオンとヒョウを交雑させて産まれる子は「レオポン」と呼ばれ、数十年前に人の手により何匹か作られた。しかし現在は(少なくとも日本では)生命倫理の観点からタブー扱いされている。

ポケモンは現実の動物とは違うのでやっちゃいけないことはないのだが、こういう事例を想起して不快感を持った人はいるのだろうと思う。




筆者は日頃何千何万といううずべんを極悪非道なやり方で殺しているが、対象が対象なだけに基本的に問題とされることはない。
しかし問題意識は持つべきである。生命倫理は知らずに踏み外すとめちゃくちゃ怒られるので怖い。