運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

3本目の論文

筆者にとって3本目となる論文が公開された。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/pre.12452

今回はParagymnodinium verecundumと名付けたうずべんの新種記載である。光顕・電顕による形態観察と分子系統解析を行った。
本種はParagymnodinium属のうずべんとしては5種類目である。既知種のP. stigmaticumと形態的によく似ているものの、負の光走性を持つ点、pusuleという構造を持つ点などにより区別される。また、遺伝的にも両者は離れており、別種であると判断した。

本属のうずべんには、餌を食べない独立栄養性の種と、葉緑体を持っているのに餌も食べる混合栄養性の種が混在している。今回のうずべんは後者にあたる。
本属の全てのうずべんが、餌を捕まえるための装置であるネマトシストを持っている。このことから、本属の共通祖先が一度捕食能力を獲得したあと、一部の種で独立して捕食を辞めたのだと考えている…が、この辺りはもう少し検証が必要だと思う。

このうずべんが持つ負の光走性は、光を当てると逆向きに泳ぐ(光から逃げる)性質の事である。
このうずべんの場合、100μmol/m2・s程度のそこまで強くない光からも逃げる上、光を弱めても走性が負から正に転じることがない。果たしてその葉緑体を使う気があるのか、甚だ疑問である。

色々と気になるところがあるうずべんなのだが、残念なことに少し前に全滅してしまい、もうこれ以上の実験はできなくなってしまった。南無。




とりあえずこの仕事はこれでひと段落である。すぐにでも4本目を出したいところだが、データがまだ揃い切っていないので、書ける所から書いているという段階だ。