運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

贅沢な悩み

研究者の多くは口癖のように金が足りないという。
筆者から見てもこれは事実であると思う。特に筆者がやっているような基礎研究の分野には、大きな金はあまり流れてこない。
注目度の高い研究は何千万や何億と言った研究費を貰っている場合もあるが、筆者の研究でそこまですごいことになるケースはほぼない。

ところが、今年度は周りの人達が口を揃えて「金が余っている」と言っている。

今年度は新型コロナの影響で研究活動が例年通り行えなくなったのは今更言うまでもない。この結果、元々そうした研究活動に充てる予定だった予算が使われずに残ってしまっているのである。
特に、支出のうち旅費がほぼ0になっているのが大きく影響している。学会が無くなっただけでなく、サンプリングにもほとんど行くことができなかったからである。

金が余る分にはいいじゃないかと思われるかもしれない。実際その通りで、古くなった機器を買い替えたり、消耗品を買い込んだりすることができた。
最近、実験室にはおそらく助教が買ったと思われる巨大な蒸留装置が置かれた。一体何に使うのだろうか。

しかし、金はあっても時間は湧いてこない。実験で金を消費するペースは際限なく上がる訳ではない。「別に金を払わなくても研究は予定通り進んでいる」という状態になっているので、特に新しく金を消費する必要性が出てこない。
また、筆者の場合研究費は年度ごとに区分けされて与えられているため、今年度の研究費は原則今年度中に使い切る必要がある。特定の手続きを踏めば来年度への繰り越しが可能だが、どうせ来年も余るだろうと思って繰り越しはしなかった。よって、余った金は意地でも使い切る必要があった。なお、年度内に使いきれなかった研究費は返納しなければならず、流石に勿体ない。
さらに、金が余ると言ってもその額が中途半端で、本当に欲しいものを買うには足りない。例えばハイスピードカメラとか…。

以上のような理由から、余らせた金はほとんど消耗品の買いだめに使われた。また、研究費を持っていた全メンバーが同じことを考えたため、研究室に大量の消耗品が積み上げられる結果となった。

何と言うか、金の使い方がとても下手であるように思う。
この研究室では、今まで金が無いなりに上手くやりくりして実験を継続させてきた。そんな所に突然金が湧いてくると、正直な所使い方がよく分からないのである。

とはいえ、これが贅沢な悩みである事は間違いない。金が無いよりある方が絶対に良い。

来年度はもう少し上手く予算を使えるように考えていきたい。