運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

小説

一応明後日にゼミでの論文紹介の発表を控えているのだが、この土日はどうにもやる気が出なかった。そもそも資料は半分くらいできているし、明日ちゃちゃっとやれば完成はするだろう。緊張感が無さすぎるようにも思うが、ゼミもここまで繰り返すとこうなってしまうものである。




ではこの土日は何をしていたかというと、小説を読んでいた。
読んだのは伊藤計劃氏による「虐殺器官」である。実は約1年前に知り合いから面白いと言われて買っていたのだが、読まずに放置していたのだった。

内容は、アメリカ軍に所属し暗殺を専門とする主人公が、様々な死に触れて苦悩する話である。題名の時点でもうあれだがとにかく沢山人が死ぬので、読んでいるこっちも価値観がバグりそうになった。
凄いなと思ったのが登場人物たちの持つ「思想」の描写である。この小説では思想に関わる文章が全体の大半を占めていた。小説全体でひとつの思想を押し付けてくる訳でもなく、様々な人物に多方面からの思想を語らせ戦わせており、作者は相当な哲学家なのだろうと思った。
…のだが、主人公にとある人物が関わった瞬間、ここまで精密に描写されてきた思想をぶち壊すかのように、その人物があらゆるものに優先するかのような行動を取り始めてマジかと思った。確かに主人公はとても強そうに見えて実は精神面に欠陥を抱えている人物として描かれているものの、それにしてもなあ、と思うのである。まあそのとある人物とは主人公がミッション中に好意を抱いてしまい且つ救いを期待してしまった人物なのだが、これは主人公が恋愛慣れしていなかったからなのか、作者が恋愛絡みの思想を描写しきれなかったのか、読者たる筆者がよく分かってないだけなのか…。

ということで終盤ストーカー化する主人公はあれだったが、読み応えは凄かった。バグった価値観や膨大な量の思想をぶつけられて、短めな小説なのに様々な世界を見ることができたような気がする。
ちなみにアニメ映画化されているらしいが観ようという気にならなかった。この小説の本質は動画映えする戦闘シーンとかではないと思ったからである。まあ興味はちょっとあるが。




こういう感じで久しぶりに小説を読んだ。たまにはいいものだ。
明日から論文を読まなくてはならない。