マカロニの謎
メインの研究がうずべんが増えるまでできないため暇である。
もちろん論文を読んだり書いたり、次のゼミに向けた資料を作ったりはしている。しかし、やはり実験をしないとつまらない。そこで今は、少し前に見つけたマカロニが生えたうずべんの観察をしている。
マカロニについて詳しくはこちら https://under-the-floor.hatenablog.com/entry/2020/06/21/202319
現時点で遺伝子のデータが揃い、TEMサンプルも準備ができた。残すはSEMである。
今回のうずべんだが、細胞が鎧板というセルロースの板で覆われているタイプである。このタイプのうずべんは、種の判別のために鎧板の配列が用いられる。新種として記載する時も、鎧板の配列の情報を載せる必要がある。
鎧板はめちゃくちゃ小さいし薄いので、光学顕微鏡では観察が難しい。一応、カルコフロールという薬品で染めることはできるが、詳しい配列までは基本的にわからない。
そこでSEMの出番である。SEMは物体の表面を観察するのに適した電子顕微鏡で、細胞表面を覆う鎧板は基本的にこれで観察できる。
…はずなのだが、そう簡単にはいかない。固定の善し悪しなどによって鎧板が綺麗に見えなかったりするので、結構な試行回数が要される場合がある。
ぶっちゃけ、うずべんの新種記載のためのデータで一番時間がかかるのはここである。
今日もSEM観察をやった。固定の方法を前回から変えたところ、鎧板が少しだけ見えるようになった。しかし、全体像の把握にはまだまだかかりそうである。
ところで、例のマカロニがあれ以来見つかっていない。
実は、あのマカロニが生えていたのは厳密には細胞本体ではなく「抜け殻」の方である。鎧板を持つうずべんは、細胞分裂の後などに古い鎧板を抜け殻として残すのだ。
現在、例のマカロニは「細胞本体には存在しないが抜け殻には着いているもの」であると予想している。検証のためには改めて抜け殻をSEMで観察する必要があるだろう。めんどくさいし不毛な気もするが、面白いのでやはり論文を書くなら載せたい。
サブワークにしては作業数が多くなってしまいそうだが、せっかくなので最後までやりたい。