運だけ研究生活

渦鞭毛藻、略して「うずべん」を研究しています。研究者の方向けの内容にはならないとおもいます。悪しからず。

迫る引越し

新居の鍵を手に入れた。

明日から新居への立ち入りができるが、都合により荷物の運び込みなど本格的な引越し作業は30日になっている。念の為電気だけ明日から使えるが、ガスと水道はまだだ。
それまで今の部屋で過ごしつつ、荷造りなどを進めることになる。

気分で始めた引越しだが、とりあえず順調で安心している。
色々めんどくさい事はあったが、やはり近場に動くだけなので結構楽だったんじゃないかと思う。




今の部屋で過ごせるのもあと数日となった。

ちなみに筆者の実家はいわゆる転勤族であり、数年に一度引っ越して回っていた。そのため、同じ家に何年も続けて住む経験があまりない。
今回の部屋には7年住んだが、ここが筆者の人生で最も長く住んだ家になってしまっている。

7年もあるとさすがに色々な出来事がこの部屋で起こった。
狭い部屋であるにも関わらず、よく友達を呼んで鍋を食べたりゲームをしたりした。最大10人ぐらい詰め込んだ記憶がある。
遠くから来た知り合いを泊めたことも何度もある。
元カノ氏が来たこともある。
ポップコーンを部屋中にぶちまけられた事もある。
水道を1週間流しっぱなしにしてしまったこともある。

隣人は癖の強い人物が多かった。
入居時から隣に住んでいるSさんは、7年経った今でも健在である。挙動不審で近寄り難く、結局関わる機会がなかったが、何者だったのだろうか。
Sさんの反対側の部屋は入れ替わりが激しかった。ある時は、音楽をかなりの音量で流す人が住んでいて、普通に迷惑だった。またある時は、家の鍵を無くしてドアが開かなくなり、ベランダから部屋に入りたいので筆者の部屋を通過させてくれと頼んできた人もいた。

こういうことを書いているとむしろ早く離れたくなってくる
荷物を運び出して空っぽの状態になった部屋を見たら、少しは名残惜しさも出てくるだろうか。

オンライン国際学会 2日目

昨日から引き続いて、オンライン上の国際シンポジウムProtist. onlineに参加した。

筆者は発表する予定はなく、本来ただ発表を聞いていればいいだけのはずだった。ところが、昨日の記事にも書いた通り、Coffee breakとかいう全くコーヒーを飲ませる気のない休憩時間の存在により、見ず知らずの外国人研究者と即席でコミュニケーションを取るというまさかの試練が課せられたのだった。
昨日は正真正銘の英弱コミュ障を発揮してしまったが、そういうものがあると分かった今日はそうはいかない。自己紹介で何を話すかを事前に考えて、聴講に臨んだ。

16:30頃、運命のCoffee break到来である。部屋にはやはり筆者と4人の外国人研究者しかいない。
自己紹介が始まった。2日かけて耳が慣れたのか、それとも当たりを引いただけなのか、今日は英語が比較的聞きやすいように感じた。
そして筆者の番である。渾身の自己紹介を披露した。
良くも悪くも内容がしっかり伝わってしまったらしく、質問が2つほど飛んできた。が、簡単な内容だったのですぐ答えられた。いや面接かよ。
ちなみに、筆者の前に自己紹介していた人が、筆者の研究室の助教と知り合いであるっぽいことを話していたので、彼と同じ研究室なんですわーという話も付け加えておいた。それくらいやる余裕が今日はあった。

ということで、問題のCoffee breakは何とかなった。





肝心の発表の方だが、昨日は分子生物学分類学のようなどちらかというとミクロ寄りな内容が多かったのに対し、今日は生態系絡みのマクロ寄りの話や、遺伝子データベース構築などのちょっと馴染みのない分野の発表が多かった。正直よく分からない内容も多かったが、大雑把に内容は掴めたし、無駄にはならなかったと思う。

また、ドクターやポスドクを募集しているという宣伝を発表の最後に付け加える人も多かった。
学会やシンポジウムは、こういう勧誘や出会いの場も兼ねている。筆者の先輩には、学会での雑談でポスドクの受け入れ先が決まった人までいる。
新型コロナで直接集まっての学会がやりづらい以上、人を受け入れる側の研究室も、こういったオンライン上の場での宣伝などが要されているのかもしれない。そういうことなら、行き先を探す側の筆者のような人間も、積極的にオンライン学会・シンポジウムに顔を出すのがいいだろう。
あと、万が一の時に備えて自己紹介ぐらいは即座にできるようにしておこうと思う。そういう意味では、今回のCoffee breakの試練はかなりいい経験になったのではないか。

オンライン国際学会 1日目

今日はProtist. online - Electronic Symposium on Protistologyという、オンライン上での国際学会、というかシンポジウムの聴講をしてみた。

Protistというのは原生生物のことで、ざっくりと単細胞生物のことを指す。この中には筆者の研究対象である渦鞭毛藻も含まれる。
先週頃に、何か面白いことないっすかね〜とネットをサーフしていた所、このシンポジウムが目に入った。その発表者リストを見ると、なんと筆者の所属する研究室の助教(カナダ人)が発表することになっていたので、これは面白そうだと思って参加申し込みをした。また、何度かお会いしたことのある日本人の研究者の方もリストに載っていた。

発表ツールは例によってZoomである。
今日と明日の2日にかけて開催される。また、開催時刻は日本時間の15:00〜18:30である。これは、普段のオンライン上のイベントが世界標準時基準の日程になりがちで、アジアやオセアニアの研究者が参加しづらいので、今回限定的に時間帯を合わせてくれたことによるものらしい。

せっかく時間帯を合わせてくれたのに、ちょっとうたた寝していたら開始時刻に遅れてしまい、15:20頃に図々しくZoomにログインした。




最近英語を聞いたり喋ったりする機会が少なくなっていたので、内容の聞き取りにかなり苦労した。スピーカー越しのため聞きづらくなっていたのも原因としてあるかもしれない。特に例の助教はいつにも増して早口で喋っていてちょっと笑ってしまった。
それでも全く聞き取れない訳でもなく、どの発表も面白く聞くことができた。
普段の「藻類」よりも「原生生物」は広い括りではあるが、違いは光合成をするかしないか程度で、研究の大まかな方向性には馴染みのあるものが多い。
中でも、真核生物の大系統を扱う研究がいくつか見られた。最近の流行りであると共に、筆者個人としても興味がある分野なので、聞けてよかったと思う。




16:30頃に休憩が入った。向こうの表現を借りるとCoffee breakである。

普通に大人しく休憩しようと思っていたら、運営からアナウンスがあった。
曰く、ここまでの発表者に追加の質問がある場合は、それ用の部屋を作ったのでそっちに行ってもらう。質問がない人は、Breaking roomという数人ずつの部屋を何個か作って、そこに自動的に割り振るので、あとは部屋内の人達で喋っててほしい、との事である。

ちょっと待て。今から筆者は名前も顔も知らない外国人数人の部屋にぶち込まれるのか?

英弱コミュ障にとってその状況は余りにも過酷であることが予想された。顔も見せずミュートのままにしてやりすごすか?それか質問部屋に逃げるかだが、質問らしい質問がぱっと思い浮かぶ訳でもない。

あたふたしていたら、Breaking roomへの割り振りが行われた。
部屋には筆者含めて5人しかいない。当然日本人は筆者しかいない。絶体絶命である。

流れるように自己紹介が始まった。しかも全員めちゃくちゃ喋っている。さすがである。しかし気が動転している筆者には内容は何一つ入ってこない。
機材トラブルを理由に逃げようかとも考えたし、実際逃げかけたが、何とか腹を括ってちょっと自己紹介をした。何を喋ったかよく覚えていない。英語だめなんです。すみませんでした。許してください。




休憩だったはずの時間は、全スケジュール中最もハードなものとなった。こんなことになるとは思っていなかった。英語力付けなければと思った。

休憩後の聴講は、集中力が完全に切れていたものの特に何事もなく終わった。
明日は2日目である。また魔のCoffee breakがあるので、今度はちゃんと喋れるようにしたい。

マカロニ

昨日の話だが、久しぶりにSEM(走査型電子顕微鏡)観察をやった。

観察対象は、未記載種と思しき謎のうずべんである。研究室の後輩が去年持ってきたサンプルから見つかり、筆者が単離したのでそのまま筆者が管理している。
見た目は地味だが、ざっくりと遺伝子を解析したところ、新種どころか新属まで作れそうな勢いのある、変わったうずべんである。遺伝子解析はまだ途中なので、結論を出すにはもう少し実験がいる。
また、詳しい形態観察はほとんど進めていなかったので、昨日とりあえずSEM観察をやってみたのだった。




SEM画像でもやはりパッと見は地味である。小型で、ただ丸いだけのうずべんだ。
鎧板を持っているタイプなので、記載するならその配列を決定する必要がある。鎧板の全体像を把握するため、細胞を舐め回すように写真を撮った。

その過程で、細胞表面に小さな突起のようなものがあることに気付いた。
長さは2μm程度の極めて小さい物体である。最初はゴミかと思ったが、どの細胞にもそれが着いているようなので、試しに目一杯拡大してみた。




それは「マカロニ」であった。




何を言っているのか分からないと思う。しかし、あれはどう見たって、正真正銘、パスタの一種のあの「マカロニ」だった。

細胞表面からマカロニ(のようなもの)が生えているうずべんなんて筆者は聞いたことがない。即座に先生に連絡したが、やはり思い当たるものは無いという。
一応、細胞表面に「鱗」を持つうずべんは存在する。Heterocapsa属のうずべんがそうである。しかし、その鱗は例えるならトライフォースのような形をしていて、マカロニとは似ても似つかない。

画像は現段階では未公開データであるため、ブログに貼れないのが悔やまれる。
というか、本当はこういうSEM見たらこんなのが見えました〜という話も書かない方がいい。が、細胞からマカロニが生えてました〜なんて書いた所で、そんな話を盗用されるリスクは限りなくゼロに近いだろう。

このマカロニの生えたうずべんを世に公開する方法は一つ、記載論文を書いて公開することだけである。
冒頭で話した遺伝子解析の結果も合わせれば、新属まではほぼ確実に立つだろう。非常に面白くなってきた。

筆者のメインの研究テーマからは外れるが、隙を見つけてデータを揃えていこうと思う。できるだけ早期の公開を目指すつもりだ。

暴走する肉体

最近はリングフィットアドベンチャーをやりつつ、たまに現実世界でジョギングするようにしている。リングフィットだけでは身につきにくい持久力を強化するためである。
二週間ほど前に久しぶりにジョギングしてみた時は、足の一部の筋肉が足りておらずかなり疲れたが、何回か繰り返すうちに慣れた。やはりリングフィットによる基礎体力の強化は効いているものと思われる。
昨日もまたジョギングしたのだが、走るペースが上がったことをはっきりと実感できた。もうすごい勢いで走ることができる。とても楽しい。

ところが、昨日走っている最中に左ひざに痛みを感じ始めた。
そこまで強い痛みではなかったのでそのまま走り続けたのだが、帰宅してしばらくしてもじんわり痛い状態が続いた。
この痛みは今日悪化し、階段の上り下りや普通の歩行にもやや支障が生じている。

原因は何だろうか。軽く調べた感じでは候補は色々ある。
やはり急に激しく動いたせいで体が追い付いていないのだろうか。また、左膝だけ痛いというのも気がかりで、もしかしたら走る時のバランスやフォームが悪いのかもしれない。もしくは、これまでの筋トレで無意識に右足にだけ負荷がかかっていて、筋肉量のバランスが崩れた…なんてことも原因としてあり得るかもしれない。


素人がいろいろ想像してもあれなので、もししばらくしても痛みが引かなかったら、病院に行くことも検討しようと思う。歩くだけで痛いのは普通につらいし、何より引っ越しが近くに迫っているので、その時までにはちゃんと動けるようになっている必要がある。
当然今日はリングフィットもジョギングもお休みした。

大学構内の植物をコンプするために図鑑を作ろう

前回記事でも書いたが、大学構内の植物をひたすら同定する学部2年生向けの実習のために、現在教師・TA陣で簡易図鑑の制作を行っている。




普通に図鑑っぽいものを作るだけなら、手持ちの植物図鑑の文章を参考にしていけばすぐできる。しかし、今回厄介なのが、留学生向けに英語でも文章を書かなければならない点である。

植物の特徴を記述する際には、多少の専門用語が必要となる。
例えば、シロツメクサ(いわゆるクローバー)の葉の形態を説明するとしよう。3枚の葉が茎の同じ場所から生えているが、これは「3出複葉」という単語だけで表現することができる。「3枚の葉が茎の同じ場所から生えている」とわざわざ文章で書くより圧倒的に楽である。
さらに、日本語の便利な所であるが、字面から何となく内容を想像することができる。専門用語を知らなくても「3つの複数の葉が出てるんだなあ」というのが理解出来る。
当然専門用語は初見だと理解し難いものもあるので、ある程度は知識を付ける必要があるが、一度覚えればとても分かりやすく便利である。

では、この「3出複葉」を英訳するとどうなるのか。

調べてみたところ、植物の専門用語をまとめてあるサイトが見つかったので引用させていただく。
http://mikawanoyasou.org/yougo/shokubutuyougo-wa.htm

これによると、「3出複葉」は「ternate」と言うらしい。

これは…ネイティブであっても理解されない可能性があるのではないか?いや最悪ネイティブには伝わるとして、留学生は必ずしもネイティブではないのだが、さすがに難しいのではないか?
試しにternateという単語をGoogle検索してみた所、インドネシアの島が出てきた。大丈夫か?

なお、ただの「複葉」はcompound leafというらしい。これは分かる。compoundは「合わさった」といった意味があるので、それが分かれば何となく複数の葉っぱがあるんだろうなあという考えに至る。ではなぜ3出複葉をtriple compound leafみたいな感じにしなかったのだろうか。




という感じなので、差し当たり、日本語なら専門用語で片付くところを、英訳する際は多少長くなっても文章で表現するのが適切な気がしている。3出複葉ならば、three leaves emerged from same position of the stem…とかだろうか?大変だ。

思ったよりハードな作業だったので、完成までもうしばらく時間がかかるだろう。

大学構内の植物をコンプしよう実習 リモート編

筆者の所属していた学部では、2年生の5月に、大学構内の植物を片っ端から同定する実習を行う。
詳しくは去年ブログにまとめたので、一応リンクを貼っておく。
https://under-the-floor.hatenablog.com/entry/2019/05/17/223401
https://under-the-floor.hatenablog.com/entry/2019/05/24/235152

筆者の研究室は藻類を扱っており、陸上植物に詳しい人はそんなにいない。しかし、他に任せられる研究室がないため、我々が頑張って指導している。

今年は新型コロナの影響で、学生を全員集めての実習を行うことができない。そこで実習の形式を変え、学生達に個人的に植物を探してもらい、その記録を提出させて成績をつけることになったらしい。
では指導側は何もしなくていいのかと言うとそうでもない。こちら側で大学構内の植物の簡易図鑑を作成し、これを学生に送って参考にしてもらうことになった。

ということで、今日はその図鑑作成のために植物を探す旅に出た。

メンバーは筆者と後輩2人である。そのうち1人はTAの身分を持たない学部4年生だが、植物に詳しいことを筆者が事前に知っていたので、申し訳ないが強制招集させてもらった。
目的の簡易図鑑は、実は先生によって7割方できあがっていた。我々学生勢の役目は、その未完成の図鑑に載っていない植物の追加補足である。

筆者は学部時代のサークル活動で植物の名前を覚えたりしていた過去があるが、その記憶は今やほとんど彼方へ消えている。
また、この実習のTAも何年かやってはいるものの、この時覚える植物というのは、実習の行動範囲に5月に生えているものに限定されている。今回は、植物を探すエリアが普段の範囲から外れ、しかも時期が1ヶ月ズレている。筆者の付け焼き刃の知識はもう当てにならなかった。

そこで頼りになったのが、筆者が強制招集した学部4年生である。
彼女は実は、先述した植物の名前を覚えたりするサークルに所属していたらしく、サークル繋がりでも筆者の後輩にあたる。とはいえ、年齢がかなり離れており、一緒に活動したことは無い。
筆者が引退してから今に至るまで、どうやらそのサークルはガチ化が進んだらしく、かなりゴリゴリと植物を同定しているとの話である。そこで培われた後輩氏の知識は確かなものであり、怒涛の活躍をした。

今日の目標は10種類の植物を図鑑に追加することであったが、結果的に14種類追加できた。

あとはこれの解説などの文章を書いて、いったん先生へ送る。今週中を目処にということである。
やや作業量を要求されるが、これでもTA業務なので仕方ない。